人形のモリシゲ
平安春峰(ドールコーディネーター)
人形のモリシゲ
平安春峰(ドールコーディネーター)
平安貴族の女性は、ひいな遊びと上巳の節句の行事、曲水の宴を一つに融合しました。ひいなとは、小さくて可愛らしきもの(人形)です。男女一対の紙や藁でできた人形を川に流し、「流しびな」を始めました。世界最古の女性文化の誕生です。川に流した男女一対の人形が無事流れ行くと、女児が、一年間無病息災で過ごすことができるというものです。平安貴族の女性だけでなく、すべての女性に、普遍的な女性文化として各地で行われるようになります。川に流されたおひなさまは、タニシを食べて、海まで流れて往ったと伝えられています。現在でも、ひな祭りに、タニシ料理を食べる風習が残っています。流しびなには、毎年、女児が元気に幸せに、過ごしてほしいという願いが込められています。流しびなは、徐々に、立雛や押絵雛となり、居間に飾られるようになります。江戸時代には、武家社会の中で豪華絢爛な十五人七段飾りが誕生し「流しびな」から「ひな祭り」と呼び名も変わり、雛人形は、一生一代のお守りとして、大切に飾られるようになります。もちろん、現代でも「流しびな」は、大切に守り受け継がれ、鳥取県の用瀬などでは、町を挙げて行われている地域もあります。また、現在では、三代雛人形を並べると縁起が良いという地域があったり、一代の雛人形を大切に受け継ぐ地域もあります。雛人形は、約1300年もの間、様々な形で受け継がれ、形を変えて心を伝えてきました。今日でも最先端のネット時代で生活する女性が、子供が誕生すると真剣な眼差しで雛人形を選んでいます。今も、昔も、日本の女性にとって雛人形は、時空を超えた宝物なのです。この宝物をどの様に保管すればよいのか、アフターフォローはどうなるのかと心配になります。もちろん、お買い上げの店で相談することになります。お店では、人形師にお願いし、可能な限りアフターフォローをします。人形師は、自分が製作した作品に対しては、責任をもって対応してくれますが、そうでない場合は、対応が難しいものです。大阪松屋町は、約30年前には約55件の人形店がありましたが、現在では約20件ほどになっています。お買い上げの店がなくなっても、有名作家の作品であれば、前述の通り対応は可能です。有名作家が選ばれる大きな理由はそこにあります。
平安天鳳 人形師、振付師 昭和27(1952)年愛知県生まれ。各人形師の下で修行後、昭和六十二(1987)年に平安天鳳と号します。平成七(1996)年、父の後を継いで二代目天鳳堂社長に就任。
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