- 雛人形
人形のモリシゲ
平安春峰(ドールコーディネーター)
人形のモリシゲ
平安春峰(ドールコーディネーター)
長男が生まれた時、両親が端午の節句に鎧三段飾りを買ってくれました。結構な金額だったように思います。その後、息子が成人するまでに何回飾っただろうか・・・そんなことを箱に収まった鎧を納屋で見るたびに思うようになっていました。両親も孫のために張りこんだにもかかわらず数回しか飾っていないことを知るとさぞかし悲しい気持ちになるだろうなぁ・・・当時の親の年齢に近づくたびに何か申し訳ない気持ちが強くなっていました。ちょうどその頃、息子が結婚することになり、息子から驚きの提案がありました。それは披露宴会場の入り口に鎧を飾りたいということでした。数回しか端午の節句に飾っていないにもかかわらず、彼の脳裏には立派な鎧を祖父母からプレゼントしてもらい、それを飾ってもらった思い出がしっかり残っていたのです。披露宴会場に飾られた鎧は30年近い時を経たものとは思えないほど立派でした。当日は数組の披露宴があり、多くの人達が、鎧を見に来たり、記念写真を撮られたりでとても幸せな気持ちになりました。鎧も日の目を見ることができ、両親もとても喜んでくれました。息子のお陰で私の両親に対する気持ちも少し晴れたように思います。翌年、息子夫婦に女の子が誕生しました。今度は私たち夫婦が雛人形をプレゼントする立場になりました。金銭的な心配もありましたが、息子夫婦は私たち夫婦が考えていた予算内の雛人形を選んでくれました。雛人形には飾る意義や役割がありますが私が購入したときに思ったことは、ただただ親の役割を果たすことが出来たという思い・・・両親にしてもらったこと(金額はともかく)を子供にもすることが出来てよかったという安堵感でした。伝統文化とは・・・役割や意義も大切なことはもちろんですが・・・祖父母、両親、子供達にただただ受け継ぐプロセス・・・そこに伝統文化の教科書道理ではない家族の絆を大切にする日本の伝統文化の心があるのではないでしょうか。
生命の誕生を尊ぶ役割を果たしてきました。
ひな祭りは親子の絆を深めてきました。
お飾りの期間は特に体調を壊しやすいことを戒めてきました。
ひな祭りは家族のコミュニケーションを深めてきました。
お雛さまの出し入れを通して整理整頓の大切さを伝えてきました。
お雛様を毎年飾ることで物を大切にする心を伝えてきました。
ひな祭りの思い出は成長の記録を残す役割を果たしてきました。
ひな祭りを祝ってくれた家族に感謝の心が芽生えます。
伝統文化とは・・・役割や意義も大切なことはもちろんですが・・・祖父母、両親、子供達にただただ受け継ぐプロセス・・・そこに伝統文化の教科書道理ではない家族の絆を大切にする日本の伝統文化の心があるのではないでしょうか。
いつの日か私は孫の披露宴でこの雛人形に出会うことができるだろうか・・・