• 盆提灯

人形のモリシゲ

平安春峰(家紋書き職人)

盆提灯の家紋入れ

明治時代の初め、明治政府は、旧暦を廃止し、西欧文明に倣い新暦を取り入れました。現在、お正月(1月1日)、おひな祭り(3月3日)、端午の節句(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽の節句(9月9日)の五節句も概ね新暦で行われています。しかしながら、お盆の行事は、7月ではなく概ね旧暦の8月に行われています。御先祖様の精霊は8月13日にあの世からこの世に来て16日に帰って行く「盆道」の決め事は、お先祖様にとって今も昔も普遍の事柄だからではないでしょうか。盆提灯の灯は、御先祖様を迷うことなく我が家へ招き入れる「盆道」を照らす、「迎え火」として、また、あの世へ送り届ける「送り火」としての重要な役割を果たしています。そうした事から、御先祖様をより分かりやすく導くために、盆提灯に我が家の家紋を入れる場合もあります。

「人間は、二度死ぬ」と聞いたことがあります。肉体が滅びたときだけでなく、その後、皆の記憶から消えたときにもう一度死ぬという意味のようです。その意味からも、盆提灯に灯をともし、故人を偲ぶお盆の行事は、日本人にとって大切な伝統行事なのです。

書き紋と張紋

書き紋は、提灯に家紋の図柄をペンで縁取りだけを描き、後で墨で塗りつぶします。張紋は、家紋の図柄をコンピューターソフトで描き、カッティングシートで家紋の張紋を制作し提灯に貼り付けます。どちらも、湾曲した面での作業のため簡単ではありません。

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これからのお盆提灯

今年、岐阜提灯の新製品、令和のあんどん「はごろも」(写真上から一つ目、二つ目)が発表されました。四、五年前に発表されヒット商品(写真上から三つ目、四つ目)のグレードアップした商品です。枠が木製になり絹張りの二重絵で内袋には市松模様が描かれています。また、写真左は、お盆提灯の絵柄では珍しい桜が描かれています。最近では、このような斬新な絵柄で場所をとらないスリムな提灯が増えてきています。市松模様柄は、2020東京オリンピックのシンボルマークにも一部デザインが使われています。また、人気漫画「鬼滅の刃」の主人公炭次郎と妹禰豆子の衣裳の柄にも一部使用されています。人気漫画の影響力は大きく市松模様柄のマスクが大人気のようです。令和のあんどん「はごろも」の市松模様柄は、単に伝統の柄をデザインしたものか、オリンピック、または、人気漫画に影響されたものなのか解りませんが、時代の流れの中で、これからのお盆提灯として変化し続けているのです。

 

 

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