• 江戸風鈴

人形のモリシゲ

平安春峰

江戸風鈴と作家遠藤由実子先生

「売り声もなく買い手の数あるは 音に知らるる 風鈴の徳」

江戸時代の末期、江戸風鈴の涼やかな音が一世を風靡しました。天秤に沢山の風鈴をぶら下げ、江戸八百八町を売り歩いた風鈴売りたち・・・。彼らは物売りには珍しく売り声を上げることはまずなかったと言われています。売り物の風鈴がそよ風を受けて軽やかな響きを奏でれば、それにまさる売り声はなかったからでしょう。当時のそんな様子を詠んだものです。

風情、風雅、風趣という言葉もある通り世界広しと言えども“風”の愛でる心を持つのは我々日本人だけでしょう。中でも、風を音に変えて、その風情を楽しむ風鈴は、まさに日本人ならではの楽しみと言えるでしょう。(篠原風鈴本舗商品説明書より)

「風鈴を見るだけで 音が無くとも心に音色が響き 人を招く これ風鈴の徳」 平安春峰

店の内側に飾られた風鈴の音は聞こえずとも、誰しも、窓越しに懐かしい音色を心の耳で聞くのではないでしょうか。そんな風鈴に誘われてお客様が店に入ってこられます。初めて江戸風鈴を販売したお客様を接客していると突然大雨になりました。私が「小雨になるまで雑談でもしませんか。」と問いかけますと、「私、小説家なんです。現在三冊目を執筆しています。」と予想外の返事が返ってきました。小説家の方と話しができる機会など早々ないので興味津々話をしました。肝心の小説の内容は、宮崎駿監督風のオバケの話のような小説という事でした。興味が湧き、本を取り寄せ、奄美大島の話から読んでみました。雛人形の着物に使用されることがある大島紬の話などがでてきました。その中で、大島紬が世界三代織物に数えられている事などは驚きであり仕事柄貴重な話でした。また、悲しい過去の現実の話であるにもかかわらずマッタリと優しく流れていく物語には癒されるものがありました。うつせみ屋奇譚は、浮世絵にまつわる話です。7月に、あべのハルカス美術館で、「広重すりの極」展を見る機会があったり、5月には広重の東海道五十三次二十番目丸子宿に立ちよる事があったり、作家遠藤先生とは、不思議なご縁を感じました。本を読むにつれ丸子宿丁子屋とうつせみ屋妖しのお宿とその周辺の雰囲気がだぶついてきます。勝手な事を書きますが、このストーリーを宮崎駿監督が映像化した映画を見てみたいと思う願望が湧き立ちました。つい最近、風鈴の音色がうるさいと苦情があったといった話を聞くことがありました。昔と違う今を生きるために寛容に対応していかなければなりません。そのために、メイン画像のように小型扇で風を起こし室内で風鈴の音色を聞きながら遠藤由実子先生の小説を読んで癒されるのもありかもしれません。「風鈴を見るだけで 音が無くとも心に音色が響き 人を招く このたびの作家との出会いも これ風鈴の徳」に他ありません。

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篠原儀治一門伝統の吹きガラスの迫力 伝統を受け継ぐ人々 坩堝の灯りを絶やさぬ地道な努力

<江戸風鈴について>
江戸風鈴の名称の由来は、五世 篠原儀治さんが文献にもとづき、ガラス風鈴のことを「江戸風鈴」と名付けたのが由来です。そして、「江戸風鈴」の名称は、篠原風鈴のブランド名になっています。
<篠原儀治のプロフィール>
昭和12年ごろより、父篠原又平に師事。
昭和40年代よりテレビ、ラジオ等々に主演。
昭和57年 江戸川区無形文化財に認定。
昭和58年 江戸川区伝統工芸会会長となる。
昭和59年 NHK朝の連続テレビ小説「ロマンス」にてガラス工芸の指導をする。
昭和59年 アメリカ、ドイツ、フランスをはじめ世界各国に行き、江戸風鈴を通して国際交流を深め、現在に至る。
昭和60年 大東京祭功績賞を受賞。
昭和63年 江戸川区文化功績賞を受賞。
平成元年 東京都知事賞・優秀技能賞を受賞。
平成4年 江戸川区産業省(優良事業)を受賞。
平成5年 国際芸術文化省を受賞。
平成9年 日本オーディオ協会「音の匠」に選定される。
平成16年 東京都知事より名誉都民の称号を受ける。
平成16年 江戸川区文化賞を受賞。
平成18年 文部科学大臣賞を受賞。
現在、江戸情緒を今に伝える江戸風鈴も作者篠原儀治をのぞいて、その正統な技術を伝承する職人もほとんどなくなってしまいました。
幸い篠原風鈴には後継者もおられ、坩堝の灯りを絶やさぬ地道な努力を続けられています。

篠原儀治一門伝統の手書き絵 ガラス内側に絵を描く 坩堝の灯りを絶やさぬ地道な努力

「伝統文化で生きること」平安春峰のひとり言

江戸風鈴の製作画像からは、昔ながらの技法で製作している職人の真剣なオーラがヒシヒシと伝わってきます。江戸風鈴は、型を使わない吹きガラス製法で、絵柄は、プリントではなく内側から手書きで描いています。正に、江戸風鈴を守り受け継ぐ為に、坩堝(るつぼ)の灯りを絶やさぬ地道な努力をされていると言えます。江戸風鈴は同じように見えてもすべて手作りの為、個々に違っています。商品ではなく芸術作品と言ってもおかしくありません。しかし、価格はと言えば、信じられない低価格が付けられています。私欲を捨てて昔ながらの製法を守られているのです。雛人形と五月人形の人形屋もそれだけで食べていけるような時代ではなくなってきました。生き抜く為に、花火や小物玩具、クラッカー、縁起物などを取り入れていくしかありません。江戸風鈴もその一つです。江戸風鈴を通して、篠原儀治氏を見習い、坩堝(るつぼ)の灯りを絶やさぬ地道な努力をしていかなければならないのでは・・と思います。

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